2010年08月12日

夏休みの子供(2)

おととい書いた、静岡市立美術館での矢野顕子さんのコンサートレビュー。
頭の中でいろいろ転がしていくうちに、矢野顕子さんとの出会いをいろいろ思い出してきたので、備忘録的に書いておく。

私が矢野顕子というアーティストを知ったのは小学生のころ。当時、初めて一人の部屋をもらって、自分のペースで寝起きすることになったのだった。そのとき、枕元にあったのが時計つきラジオで、夜、寝る前にいろいろとチャンネルをさぐるうち、NHKのAMで放送していた「若いこだま」という番組と出会うことになった。
ここで、なんだかふわふわとした、何を言っているのかちゃんとはわからない、でもきっと自分の言葉で自分の思いを語っている不思議なしゃべり方をする女の人と出会ったのだった。
もしかしたら、音楽と同じぐらい、そのしゃべり方にも惹かれたということを、今思い出した。

この番組は、AMのくせにかなり先進的な音楽を流していた。いや、AMのくせにというのはフェアじゃないな。クラシックやジャズが強かったFMで紹介しきれない若い日本の音楽家が活躍できる唯一の場所だったのだ。

今、当時の文献を見直すと、矢野さんの番組には、ゲストには細野晴臣さんや本田美奈子さんなどそうそうたるメンバーがゲストとして登場していたし、矢野さん以外の曜日には、甲斐バンドの甲斐よしひろさんや、荒井由美さん(結婚前のユーミン!)などがDJを勤めていたらしい。
らしい、というのは、ひとつには矢野顕子があまり強烈過ぎてほかのDJのことを覚えていないということだ。

そういえば、そのラジオの音量を上げて、近くでカセットレコーダーを回して録音し(ラインじゃないから当然ひどい音質だ)、母に矢野顕子のトークや、変拍子の「丘を越えて」を聞かせたことがある。

母の感想は、「なにこの人、おかしいんじゃない」。・・・当時の大人としては正常な反応なのだけど、矢野さんを通して音楽に初めてであった小学生にしてみれば、「自分が魅力的だと思った、この音楽は普通じゃないんだ」と思い知らされた。そして、思い知りつつもこれが自分の音楽を聴くときのスタンダードになってしまって今に至るという、、、、、。

でも、そういう雷に打たれるような体験があるからこそ、今もこんなに音楽を聴くのが楽しいと思えば、矢野顕子も、そしてそれを「おかしいんじゃない」と言ってくれた母も、どっちもありがたい気がする。  


Posted by しぞーか式。 at 22:15Comments(0)しぞーかでアート