2009年11月02日

めくりめくって。頁間の迷宮へようこそ

先週、静岡アートギャラリーの『The Library「本」になった美術』展に行ってきた。

アートギャラリー自体、次の展示で一区切りと言うことで、若い作家さんを中心に、気合が入った展覧会だった。
私が中で面白かったのは、分厚い本をくりぬいて、アリの巣穴のようにページに穴をあけた作品。

本を閉じていると、そこに穴があいているとは思わない。
一ページずつめくると、その穴が繋がり、枝分かれして、膨らんで、また繋がって、有機的な形の空間がその本の中に広がっていることがわかる。
でも、本が閉じているときに本の中にあいているであろうその空間は、どうがんばっても、見ることができない。(石膏で型取りでもしないかぎり。)

一冊の本の中に、イメージすることでしか見られない空間が広がっている、そのことに驚きを覚えた。


このほかにも、触っているとぼろぼろとページがはがれていく作品、草で編んだページで作った作品など、46人45組の作家さんたちが、それぞれに本というモノが持っているたくさんの可能性を切り出していることを楽しんだ。

イメージの保管場所として。
記憶を伝える道具として。
触れて感じるオブジェとして。



もうひとつ、おまけ的な話だけど、個人的にとても楽しんだのが、最奥の本の展示。

古本を使った作品なのだが、『人生行路の諸段階』キエルケゴールという本で、「私の意図は結婚反対論者をやっつけることだ」と書いてあるページが開かれていた。
キエルケゴールって、せっかく婚約した恋人を、(よくわからない、たぶん哲学的理由で?)婚約破棄しちゃったというエピソードの持ち主。
そんな人が、結婚を奨励するようなことばを綴っていたとは、、、、、。





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Posted by しぞーか式。 at 23:14│Comments(0)しぞーかでアート
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