2010年05月08日

『多可能』

お店って、第一印象が勝負。
一回目の出会いでボタンをかけちがうと、本当は大好きになるはずの店とすれちがってしまうことがある。
むしろ、一回行って印象がついているだけに、2度目に行くのにはかなりの偶然がかさならないといけない。連れがどうしても行きたいと言うとか、店の前を歩いている時にたまたま雨が降ってきたとか。



たとえばこの居酒屋、『多可能(たかの)』。

ずいぶん昔に一度だけ行ったことがあった。その時から既に有名店だったので期待して行ってみると、黒はんぺんは塩辛すぎ、おでんは「熱い」と「冷めてる」の間の微妙な温度。「うーん、微妙な店だなあ」と、(その後も何度か行くチャンスはあったのだけど)敬して遠ざかっていた。
店の構えがよく、ちょっとアダルトな常連さんが多いだけに、そうなってしまうともう、「俺のタイプの店じゃないんだよな」という気持ちになってしまうのだ。



、、、、、でも、先日久しぶりに訪問したら、なんだ、いいお店じゃないですか。

『多可能』

突き出しには旬のタケノコ。(訪れたのが4月下旬ぐらいだったので)

『多可能』

やわらかいワカメの酢の物。ちょい凍ってたけど、すぐにちょうどよくなった。
このほか黒はんぺんをいただいた。

この日はあいにくの雨だったのだけど、常連さんがびっしりカウンター席に座って、1,2人でゆったりと自分のペースで飲んでいる。
改めて行ってみて思ったのは、こうしたゆるゆるとした時間を味わう店なんだな、ということだった。もちろん、それぞれのつまみの味も、スローで悪くない。


焼津の『寿屋』ほどは、スタイリッシュではない。
うーん。
『寿屋』をスタイリッシュという感じって、わかってもらえるか不安なのだけど。『寿屋』は、店主の強力な意思が働いてあの研ぎ澄まされた空間が維持されている。
一方、『多可能』は、そういうテンションを感じない。なんか立ち姿がすごくユルいのだ。

テレビもガンガンに鳴ってるしねえ。

でも、大事なことは、味やスタイルに気をとられてこの時間を楽しむことを忘れるなかれ、なのである。テレビを見ながらおでんをつつくのが快いときもある。

自分の心に耳を澄ますべし。

『多可能』


『多可能(たかの)』
静岡県静岡市葵区紺屋町5−4
054-251-0131
16:30〜23:00(LO) 定休日 日・祝日




同じカテゴリー(しぞーかを味わう)の記事画像
行き止まりのその先に
修善寺の蕎麦マシーン!
モダーン アタミ
ほっとする味。
くちびるに牛乳瓶
ちょいとブラジルへ。
同じカテゴリー(しぞーかを味わう)の記事
 行き止まりのその先に (2011-06-14 19:10)
 修善寺の蕎麦マシーン! (2011-03-21 23:59)
 モダーン アタミ (2011-03-16 23:59)
 ほっとする味。 (2011-02-08 23:55)
 くちびるに牛乳瓶 (2010-11-01 22:57)
 ちょいとブラジルへ。 (2010-08-28 22:46)

Posted by しぞーか式。 at 20:26│Comments(4)しぞーかを味わう
この記事へのトラックバック
静岡市葵区紺屋町にある居酒屋









大衆酒場『 多可能(たかの) 』
静岡駅前パルコ裏にある大衆居酒屋。
創業から88年の老舗の居酒屋だ。
たまたま前を通りかかってイン!

「サー ...
多可能(たかの)@静岡 紺屋町 居酒屋 静岡おでん【殿のBlog】at 2011年12月29日 08:03
この記事へのコメント
しぞーか式さん、こんばんは!

多可能さん、いちどだけ行ったことがあります。こういう漢字を使うのは、はじめて知りました。お店のお兄さんお父さんのさばきがすてきだなあと思いました。

そしてことぶき、えんどうまめ先輩はKY(空気読めない方で)ですので、研ぎ澄まされ感がチョットわからないですけど、ことぶきでは、ほかでも出会わないすごくへんなお客さんに出くわします。
厨房?に入って、包丁をチョットふりまわしたおじさんがいて、へんなだけにその後もかなり長い時間ずうずうしく居座っていました。そのおじさんが、まだなにも言ってないのに、前島さんは、いつものステキな笑顔で「お帰りですか?」って何回も聞いておじさんの一人語りの腰を折り、やっと帰りました。
その話を、ことぶき2〜3回のお友達に話したら、「こわ〜い」って言いました。前島さんの方です。厳しいと受け取ったみたいです。そんなにイヤミなさばき方ではなかったですが。
しぞーか式さんのおっしゃる「強力な意志」は、たぶんこの話とチョットちがって、もっと目に見えない的なものかと想像するのですが、前島さんのきちっとして慇懃な接客をいうですか?
あと、個人的にことぶきのお客さんで、地元常連(ご近所系)でもなく、業界系でもなく、県外系(太田和彦一派含む)でもなく、芸術系でもない、中途半端な自称常連のご年配のお客さんは、みな前島さんに対する口のきき方がとても横柄でイヤミっぽいので不快です。そんなお客さんに出くわしたことはないですか?その点で、それほど緊張感を放っている感じがしないというのが、正直な感想です。

長々とすいません!
Posted by えんどうまめ先輩えんどうまめ先輩 at 2010年05月09日 22:07
私がスタイリッシュと書いたのは、すごく漠然とした言い方になりますが、お店の全体的な印象を維持していこうとする意思の力みたいなことです。
あの長い栓抜きや氷の冷蔵庫を使い続けるところとか、音楽をかけないところとか…、そういうディテールを積み重ねたお店の雰囲気という部分で、先代の作ったスタイルを守り通そうという強い、過剰な意思みたいなものを感じるのです。
だから、接客に緊張感があるという話ではありません。
常連さんとの接し方も、先代譲りということなんでしょうね。特に常連だから特別扱いをするでも安くするでもない感じは好感が持てます。

包丁の客について言えば、お店の切り盛りでは多かれ少なかれ修羅場は付き物で、前島さんらしい捌き方だと思いはすれ、怖いとは思いませんが。私は(そんなに寿屋に行けてる訳ではないのですが)いつも非常に寛いでいます。
Posted by しぞーか式。しぞーか式。 at 2010年05月09日 23:21
ありがとうございます!わかりました。
先代がいらっしゃったころは、前島さんのお話から想像するしかないですが、たぶん先代さんも前島さんも特別なことをしているつもりはないのだと思いますけど、しっかりした思いをもっていらっしゃるのだと思います。ありがとうございます!しゃべりに夢中で気づかないことが多いです。いろいろと教えてもらえ、ありがたいです!
Posted by えんどうまめ先輩えんどうまめ先輩 at 2010年05月09日 23:54
私も先代のころは知らないので、エラそうなことを言ってすみません。
ただ、時代が移るにつれ、今まで普通だったことが、時とともに普通じゃなくなっていくことがあると思います。例えば氷の冷蔵庫を使い続けることがだんだん大変になってくるとか。
そういうところで、先代より、当代の方が続けるのに大変なことをしているのかもしれません。
Posted by しぞーか式。しぞーか式。 at 2010年05月13日 00:19
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
『多可能』
    コメント(4)